このシミュレーターでわかること
個人事業主が法人化すると、所得税の代わりに法人税がかかり、国民健康保険と国民年金の代わりに協会けんぽと厚生年金に加入します。税率の仕組みも保険料の決まり方も違うため、どちらが得かは利益の額と役員報酬の決め方で大きく変わります。
法人化の得の多くは、会社にお金を残し、将来退職金として受け取ることで生まれます。そのため、このツールは1年分ではなく、退職するまでの合計で比べます。合計には、毎年自由に使えるお金(生活費などに回せるお金)と、退職時に受け取る退職金・小規模企業共済の手取りを含めます。
役員報酬で結果が変わる理由
役員報酬を高くすると、会社の利益が減って法人税は下がりますが、個人の所得税・住民税と社会保険料が増えます。低くすると会社にお金が残りますが、役員退職金の上限(最終の報酬×在任年数×功績倍率)も下がり、上限を超えた分は退職金として受け取れません。このツールは、生活費を確保できる範囲で、この兼ね合いが最も良くなる報酬を探します。
法人化で見落としやすい点
- 配偶者が収入なしの場合、個人事業では配偶者の国民年金(年約21.5万円)と国保の負担がありますが、法人化すると健康保険の扶養と第3号被保険者になり、この負担がなくなります。
- 社宅にすると家賃の大部分を会社の経費にできます。個人事業では、仕事で使う割合の分しか経費になりません。
- 退職金は、退職所得控除を引いた残りの半分にしか税金がかからず、社会保険料もかかりません。ただし在任5年以下の役員は、半分にする特例がありません。
- 厚生年金に加入すると保険料は増えますが、将来の年金も増えます。1年加入ごとに増える年金額の目安を表示しています(合計には含めていません)。
- 会社が赤字でも法人住民税の均等割(最低年7万円)がかかります。利益が少ないうちは法人化が不利になりやすくなります。
計算の前提
- 2026年(令和8年)の税制と保険料率で、同じ利益が退職まで毎年続くと仮定した概算です。所得税は令和8年分、住民税は令和9年度分の制度を使っています。会社に残したお金の運用益や物価の上昇は含めていません。
- 個人事業は青色申告特別控除65万円、個人事業税は税率5%(事業主控除290万円)で計算します。業種によって税率が違う場合や非課税の業種もあります。
- 法人は資本金1千万円以下の中小法人とし、法人住民税・事業税は標準税率で計算します。役員報酬は毎月同額(定期同額給与)とし、賞与・配当は含めていません。
- 役員退職金は、会社に積み上がったお金と「最終の役員報酬(月額)× 在任年数 × 功績倍率」の小さいほうを受け取るとします。退職金を払った年の会社の赤字による税金の減少は含めていません。上限を超えて会社に残ったお金は合計に含めず、別に表示します。
- 小規模企業共済は、掛金と同じ額を退職時に一括で受け取るとします(実際は加入年数に応じて増減します)。役員退職金と同じ年に受け取る場合は、退職所得控除をまとめて計算します。
- 社宅の本人負担は入力した割合とし、小規模でない住宅は家賃の50%以上とします。社会保険では、本人負担が現物給与価額(令和8年10月からの床面積1㎡あたりの額)に満たない差額を報酬に加えます。
- 子どもは扶養控除の対象外となる16歳未満として計算します。国保の未就学児軽減は含めていません。
- 配偶者の状況による違いは、配偶者控除・配偶者特別控除、国保(世帯でまとめて計算)、国民年金、配偶者が会社の健康保険の扶養に入れるかどうかに反映しています。会社員の配偶者は、配偶者控除の対象にならない収入があるものとします。
- 自営業・パートの配偶者の、自分の収入にかかる税金は、法人化してもほとんど変わらないため含めていません。国保と国民年金は世帯で払うものとして手取りから差し引いています。
- 事業を手伝う配偶者の給与は、個人事業では青色事業専従者給与(配偶者控除は使えません)、法人では毎月同額の役員報酬とし、配偶者にも同じ功績倍率で退職金を払うとします。実際の仕事の内容に見合った金額である必要があります。
- 65歳以上の介護保険料(市区町村に払う分)は両方のケースで同じとみなし、含めていません。
試算結果は入力した条件にもとづく概算で、税務・法律上の助言ではありません。実際に法人化するかどうかは、税理士などの専門家にご相談ください。